「それよりも十夜、あんた庭掃除さぼったでしょ…?」
理緒が腕を組み、そう言うと十夜が反応するよりも先に日向が首をかしげた。
「え、でも十夜が暇だから稽古しよ…むがっ」
「わ!!それ言うなよっ日向」
十夜が慌てて日向の口を手で塞いだが、理緒はある単語を聞き逃す事はなかった。
「へぇ……。あんた、暇だったんだ?」
理緒が眉をひそめ呟くと、十夜が理緒の元に駆け寄る。
「いや、違うんだ理緒…ちょっと待って……いででで!!」
言い訳を始めようとした十夜の耳を、理緒が引っ張った。
「言い訳するぐらいなら戻って掃除して」
十夜の耳を引っ張ったまま、歩き出した理緒に十夜が涙目になりながら叫ぶ。
「わ、分かったっ!!分かったから離してく…痛ぇっ!!」
「うるさい、離したら逃げるでしょ」
「逃げない…逃げないって!!ぃでで…み、耳がちぎれるっ!!」
いつものやり取りを始めながら、歩いて行く理緒と十夜。
その背を見送り、ため息を吐いた日向は、自分も掃除でもするか…と考えながら広場を後にした。


