神威異伝





周りで歓声が起こる中、十夜が苦笑した。



「…あぁ、一本取られたよ日向」


両手を上げ、十夜が降参の意思表示をする。


日向は木刀を拾って、十夜に向かって投げた。



「どうだ、もう一回するか?」


日向が槍をもう一度強く握り直した。

十夜も木刀を日向の方に向ける。



「よし。次は―…」
「ちょっと待ったー!!」



その声と共に、二人の頭に小石が命中する。


日向と十夜の稽古を止めに入ったのは、ここに来た本来の理由を思いだした理緒だった。



日向が痛む頭を擦りながら、口を開いた。



「理緒っ?何で石なんか…」
「そうでもしなきゃ、あんた達気づかないでしょ?」



悪びれる事なく、理緒はしれっと応えた。