…広場に響く、気合いの入った声に理緒の意識が目の前に戻った。
木刀を振るっているのが、理緒に見つけられて助けられた少年、十夜である。
十夜は、理緒の幼馴染みである日向を相手に稽古をしている。
二人とも汗だくで真剣な眼差しなのに、楽しげな微笑がその口元に浮いていた。
ほんの数週間前まで、十夜はまともに動く事が出来なかった。
しかし理緒と賢雄の介抱のおかげか、今では普通に生活出来る様になるまで回復した。
「…はぁっ!!」
十夜が木刀を突き入れると、日向が軽く身を捻ってかわす。
日向が槍を横に薙ぐと、十夜が木刀でそれを受け止める。
だが、日向の力強い一撃を受けて十夜の木刀が横に弾かれた。
「これで、俺の二勝一敗だな?」
十夜の眼前に槍を突きつけ、日向が笑う。


