一月一日、元旦

お節料理を囲みながら、テレビを眺めていると、明治神宮や川崎大師、伊勢神宮などの、全国の初詣の光景が映し出された。
「近くの神社でいいから、行きたいな」
そう小さく呟いたのは、春香だった。
「じゃみんなで行こうよ」
莉那が無邪気に答えた。
「バカ!」
悪気はないとは分かっていた。だがその無邪気さは、時として仇となる。出来ることならば一緒に行きたいさ。だが春香の体を思うと、それは危険と隣り合わせの行為だった。家の中ならまだ一人で歩けるが、といっても、壁を伝い這うようにだが。少しでも外出する際は車椅子を使うようになっていた。それにこの寒さだ、万が一風邪でも引いたら、命に係わる事態になりかねない。
「折角だ、みんなで行こうじゃないか。拓哉君に莉那ちゃんもいるんだし、それに春香と初詣なんて、もう何十年も行ってないしな」
でも、何か言いたそうなお母さんを片手で制して続けた。
「天満宮なら近いし、車も止められる。十分暖かい格好をして行けば問題ないさ。それから甘酒でも飲んで帰って来よう」
春香の顔に微笑みが浮かんだ。笑顔と呼ぶには弱弱しく、昔の様なはち切れんばかりのそれからは、程遠かった。一面の雪景色に輝く日の光を、眩しそうに眺めている様な頬笑みだった。