「幸せ者だな。これだけの人に愛され、大事にされているんだぞ」
癌なんかに負けるなよ。
「こんな俺でも、出来ることは何でもするから。両親を残して先立つなんて、親不孝者だって言ってたよな?あんな優しい御両親の娘が、親不孝になんかなっていいはずがないだろ」
そう言って、今にも消えてしまいそうな掌を握り、眠りの中に溶け込んで行った。その手を、微かに握り返された様な気がしたが、それは現実に起こったことなのか、夢の中の出来事でしかなかったのか、判断することは出来なかった。