そして津田沼に引っ越してきたことを伝えた。両親は涙を流しながら、何度も何度も、ありがとう、ありがとう、と繰り返した。
「春香さんに会わせてもらっても、いいですか?」
両親に連れられ、二階へと続く階段を上った。母親の手により、静かに扉は開かれた。両親を扉の前に残し、そっと足を踏み入れた。ベッドの上で静かに眠る春香の姿からは、現代医学でも太刀打ち出来ない病魔に侵されているとは、想像も出来なかった。ただ風邪を拗らせて眠っているだけの様だった。だが、ベッドから少しはみ出した手を両手で握ると、たちまち現実が押し寄せてきた。