「娘の病気に関しては、ご存じだと思います。どこまで聞いたかは分かりませんが、今日拓哉さんの表情を見て、全てを知った上でいらっしゃったと、勝手に判断させていただきました」
「やはり春香さんは、癌なんですね?」
小さく頷く姿が目に入った。
「なぜ告知をしたんですか?」
それまで黙っていた父親が口を開いた。
「いずれは告知をしなくてはいけなかったのです。最初は膵炎と言って誤魔化しました。その時も誤魔化せていたのか…。いずれにせよ、お医者様からも、もっと病状が悪化すれば、伝えなくてはいけない時が来ると言われていました。治療方針を決めるためにも、その日はなるべく早い方がいいと」
一度も目を向けることなく、その言葉は時に怒りを含み、時に諦めを含む様に浮き沈みした。
「なぜ治療を選ばせなかったんですか?」