「ねぇ、お母さん、病室からは海が見れるかな」
車窓から次々へ流れて行く防音の壁と、たまにその隙間から除く景色を眺めながら聞いた。
「海からは少し離れているから、見えないかもね」
一日で終わらせた引越しに疲れたのだろう、眠たそうな声が返ってきた。
「だよね。私決めた、好きな時に好きなだじけ海を眺めて、お母さんの手料理を食べて、お父さんの帰りを待ちながら、残りの日々を過ごす」
揺らぐことのない決心を、元気よく発表しようと思ったのに、最後の方は涙が溢れて、止まらなかった。