「そんな映画館あるんですか?」
最悪の結果は免れた。だがまだ油断は出来ない。
「そうじゃないんだけど、今日行った映画館は一人の人も結構いたから」
「そう言うことですか。今まで一人で映画館に入ったことはないな」
視線を空中に漂わせながら、少し考えるような表情を見せた。
「僕も今日初めて一人で見に行ったんだけど、悪くはなかったですよ」
「でも一人ではまた今度の機会にします。今回は一部二部とも一緒に見てる友達と行くので」
友達、このキーワードが意味することは大きかった。彼氏はいなさそうだ。そう思うと、目の前の笑顔はより一層輝きを増した。さっき知り合ったばかりなのに、色々な表情をみせてくれる。こんな子といれば、退屈しないだろうな。