中華街でも一本裏道に入った様な隠れ家的な店で昼飯をとると、海沿いのみなとみらいを散歩した。貴美といると、なぜか肩の力を張らずにいられた。気を遣い過ぎることもなく、だからと言ってお座成りな訳でもない。きっと、お互いのことをよく分かり合っているからこそ、自然体でいれたのかもしれない。大学時代は気付けなかったことに、半年という月日と、別の恋が、そのことに気付かせたのかもしれない。恋は人を盲目にすると言うが、それは、周りが見えなくなるという意味だけでなく、大切な人の良いところまで、見えなくしてしまうことなのかもしれない。
横浜ラウンドマークタワーを見上げ、赤レンガ倉庫を周っている内に、時間は夕方の五時を過ぎていた。
「夕飯も食べて帰るか?」
歩きまわり、すでに小腹が空いてきた。
「なら家にいらっしゃいよ。久々に腕を振るうわよ」
そう言って、袖をまくる真似をした。久々に貴美の手料理か、悪くない。そうと決まれば、早速駅に向かい、貴美の住む蒲田へと向かった。