「よく渋谷へは来られるんですか?」
「月に一回か二回、買い物に来るくらいですね。よく来られるんですか?」
緊張感が伝わってきた。少しでもそれを解こうと明るく答えた。
「家が近いんで、でも月に二、三回かな。今日は何の買い物に来たんですか?」
右手に持った小さな袋を見つつ尋ねた。今なら聞いても不自然ではないだろう。
「たいした物じゃないんですけど、化粧品を。何を見に来られたんですか?あっ、食器でしたね」
少し舌を出して笑う。その表情に、動揺してしまったことは言うまでもない。
「そう、あまりいいのがなくて。それに一番の目的は、映画だったから」
「何の映画を見に来たんですか?」
今までで一番興味深げに聞いてきた。彼女も映画などが好きなのかもしれない。そう思いながら映画のタイトルを口にした。