目覚めると、貴美は黙って見つめていた。
「起きた?気分はどう?」
体の中に重いだるさは残っていたが、頭の痛みも、気持ち悪さもさほど感じなかった。
「悪くはないよ、いつから起きてたの?」
眠い目をこすり、起きたばかりには思えない貴美に問い返した。
「そうね、一時間はたったかしら」
そう言われ時計に目をやると、すでに昼の十二時を回っていた。あれから三時間以上眠っていた様だ。
「よくも飽きずに」
そう言って唇を寄せた。眠っている間に、まるでこの半年間をタイムスリップしたかのようだった。それくらい自然な動きで、当たり前のことをしただけの様だった。
「何か食べにでも行く?駅前のレストラン美味しかったわよね。でも食欲はなさそうね」
学生時代によく二人でランチを食べに行った、イタリアンレストランのことを言っているのだろう。
「ご明察の通り、食欲はないよ。それより冷蔵庫から水を取って来てくれないか」