自動ドアの向こうにその影を見つけた時は、心臓が鼓膜を直接揺らしているのではないかとばかりに、高鳴っていた。
「あっ、さっきは。買い物ですか?」
あくまで偶然を装った。これは偶然だ、偶然だ。
「あっ、こちらこそさっきはすみませんでした。はいっ、これを買いに」
驚きとも困惑ともつかぬ顔で、右手に持った黄色い袋を軽く上げて見せた。その仕草、表情は第一印象を裏切らない程に、眩しかった。
「僕も食器を探しに来たんですけど、なかなかいいのがなくて。同じ店にいたなんて、偶然ですね?」
驚いた様に振舞いつつも、準備していたセリフを読み上げた。これなら手ぶらでも不自然ではないだろう。そうですね、それ以上の言葉は続かないようだった。無理もない、彼女にとっては思ってもみない展開のはずだ。
「もう、帰られるんですか?」
ここは第二の山場だ。第一の山場が、彼女の入る店だったとすればの話だが。