平安物語=短編集=【完】




桜が咲き誇る頃―

「まあ、よくお似合いだわ。」

嬉しそうに目を細めて皇太后様がご覧になるのは、御年十一歳の姫宮です。

いつぞやの桜色の織物を仕立てたものをお召しになって、おっとりと座って微笑んでいらっしゃいます。


このお方は、皇太后様の実の御子ではいらっしゃいません。

七年前に故朱雀院が出家あそばす時、当時四歳の姫宮の御身を案じ、中宮でいらした皇太后様の養女に出されたのでした。


実の母君をほとんど覚えていらっしゃらない姫宮は、皇太后様を母上と呼んでよく懐いていらっしゃり、皇太后様もまたこの上なく大切に愛していらっしゃいます。


この姫宮の御器量は、故皇后様の御娘・女二の宮と並ぶ美しさです。