平安物語=短編集=【完】




しかしその年突然、本当に突然、弘徽殿様が中宮に上られました。

麗景殿様は皇后になられ、二人の后が立たれたのです。

そして、中宮の一の御子が東宮に立たれました。


宮様はほっと溜息をつかれて、

「帝は本当に素晴らしい御方だわ。
きっと全て御存知なのね。
麗景殿様の裏切りも、全てお分かりになった上で許され、それでいて皇統をしっかりと守られた。
本当に賢明でいらっしゃる。
本当に…。」

と、しみじみと仰いました。