そしてその夜宮様は、私以外の者は皆お下がらせになって、殿の帰りを待たれました。 麗景殿様を訪ねてでもいたのでしょうか、殿の帰りは遅かったのですが、その間宮様は一言もお口にされませんでした。 帰って来た殿も、何か異常なものを感じたようです。 「お帰りなさいませ。 お疲れ様でございました。」 まずはいつもと変わらず柔らかな笑顔でお迎えになって、殿にお酒をお勧めになりました。 殿も断る事もせず、宮様のお酌を受けます。 私は、少し離れた所で控えておりました。