平安物語=短編集=【完】




「もう見知っていらっしゃるとは思うけれど、登香殿女御です。」

帝は、そう中宮様に仰いました。

「お久しゅう存じます。」

と言って頭を下げた後に中宮様を見上げると、中宮様は真っ直ぐな瞳で私をご覧になっていました。

「ごきげんよう。」

とだけ仰った中宮様のお顔からは、感情の一切が認められませんでした。