車に乗り込むと、木箱を胸に抱きしめて静かに涙を流していた。 その肩をそっと抱くと、本当に穏やかで美しい笑顔を返してくれる。 「宮様、私…とっても幸せです。」 「私がもっと幸せにします。」 「私も、きっと宮様をお幸せに致します。」 微笑み合って目を外にやると、もう梅の蕾が膨らんでいた。 もう、春も近い。 ― 式部卿宮家 ―