「…お待ちくだされ!」

父宮の突然の大声に驚いて立ち止まると、父宮が何かを召し使いに取りに行かせた。

小さな木箱を受け取って、私を素通りして車の傍に行く。


「姫…あなたを守れなかった父を許してください。
私は、あなたもあなたのお母上も愛しています。
不甲斐なくてそれを示せないのです。
でもどうか信じてください。
これは…あなたのお母上からのお手紙の全てです。
私達は心から愛し合っていたし、当然あなたの事も。
それを分かって頂きたい。」


紅葉の君の表情は見えず、言葉も聞こえない。

ただ、父宮が耐え切れないように袖で目元を押さえた。

そして私の方に向き返り、

「よろしくお願い致します。」

と微笑んだ。