平安物語=短編集=【完】




「ご案内致します。」

父宮の家来に声をかけられて、席を立つ。

そのまま西の対に案内しようとした。


「待て。」

足を止めて、東の対の紅葉の君の部屋だった所に目を凝らした。

しかし今宵は月が出ておらず、よく見えない。


バッ


見ていた所の簾が突然大きく捲れた。

「式部卿宮様…!!」

聞き覚えのある、右近の声だった。