北の方の在所に近づくにつれ、微かに琴の音が聴こえてきた。 深々と溜め息が出る。 中の君自身か腕の立つ女房かは分からないが、さり気なく中の君と思しき人の琴を聴かせて私の気を引こうと言うのだろう。 確かに、普通の浮気な男が耳にしたらゆかしく思われるだろう音色だ。 中の君は琴に長けていて、器量良しとの噂もある。 しかし同時に、…驚く程わがままだとの噂も。 北の方が、顔立ちの美しい中の君をこの上なく大切に養育しているのだとか言うことだ。