前後の見境も無い程泣きくれていらっしゃるお二人から離れて、部屋を出ました。
自室に帰ると、女房達は出払っていました。
作りかけの本がそのままになっています。
姉上が退屈だろうと、源氏物語を写させていたのです。
紙を切る小刀を持って、奥に進みました。
人より優れているとは言えない黒髪を、体の前側にかき寄せます。
姉上が優しく撫でてくださった感触を思い出して、初めて涙が出ました。
あの時姉上が仰ろうとした事を、どうして聞こうとしなかったのでしょう。
きっと、御遺言がおありだったのに。
声をあげて泣いた後、遂に、髪を切り落としました。

