平安物語=短編集=【完】




その翌日でした。

珍しく父上が私の部屋へいらしたと思ったら、信じられないような事を口にしたのです。


「帝が、あなたを女御にと強くご所望です。」


周りの女房達はざわめき立ち、隣にいた妹は首を傾げて私を見ます。

「東宮様への入内が決まっていると、いくら申し上げても駄目でした。

あなたでなければお嫌らしいのです。

…帝にお会いしたのですか?」

父の苛立ちが口調から微かに伝わってきて、私は申し訳なさに全身が震えました。