いかにもひっそりとした、でも広々として立派な御殿に着きました。
こんなにも一目を避けなくてはならない我が身の不遇が悲しくて仕方ありませんでしたが、いくらなんでもこういう門出の日に涙は不吉ですから、ぐっと堪えて案内されたとおりに中に入りました。
私に用意されたのは、御殿の東の対です。
中で内大臣様がどっかりと座っていらっしゃいました。
さすがにこうして待っていてくださったのかと、安堵します。
「お待ちしておりました。」
そう仰って微かに笑みを浮かべてくださったことが、どれほど嬉しかったことか。
その夜はあれこれお話して、今までよりはもう少し遅く、北の方の所へ帰って行かれました。

