平安物語=短編集=【完】




しばらくして中宮様達がお戻りになり、もうおいとますることになりました。

一の宮と二の宮は、お互いに離れがたく思っていらっしゃいます。


「この度の参内のうちに、今度はこちらからお訪ねいたしましょう。」

皇后様が一の宮にしっかりお約束なさって、やっと帰ることをお認めになりました。



帰り道の途中で、宮様は眠ってしまわれました。

抱き上げて御寝所へお連れすると、中宮様もついていらして愛しそうに宮様のおつむを撫でられます。


「待望の御子ですから、可愛くて仕方がなくていらっしゃいましょう。」

私がそう申し上げますと、

「ええ。

どうして我が子というのは、こんなに愛しいのでしょうね。

この子のためなら何だって出来る気持ちになってしまいます。」

ふわっと微笑まれて仰るので、

「私も、貴賤の差は明らかではございますが、宮様と隆資を等しく大切に思っております。」

と申し上げました。