平安物語=短編集=【完】




その美しさともの悲しさに魅入っていると、視線に気づいたのか、その方がふいにこちらを向かれました。

驚いた顔をなさって、そしてそのままこちらにいらっしゃいます。

部屋の奥深く育てられて、父以外の殿方とは話した事もない私は、もう狼狽しきって手足が震え、その場に棒立ちになりました。