こっそりと渡殿を渡りきってふと顔を上げると、少し先になんと一人の殿方が立っていらっしゃいました。 その方もまた月を見上げていらして、私にはまだ気づいていらっしゃいません。 しかし私からは、その方のお顔がはっきりと見えました。 月の光に照らされた、なんとなく物憂げで切なげな、美しいお顔が…