辺りが静かになり、そろそろ屋敷に入ろうと振り返った時、温かく優しい風が一陣ふいた。

その香は…

紛れもない、清子のものだった。

「清子…?」

小さく呼びかけるも返事は無く、ただ香だけが残り、私を包んだ。

そしてその香は、全く私の衣に移ること無く消えていった。






―右大臣―