平安物語=短編集=【完】




その夜は、帝はどの妃もお召しになりませんでした。

こういう事は珍しくもありません。

愛してもいない女達を毎晩毎晩抱くのは、きっとお辛いのでしょう。

しかしその日は、名月の夜。

その月を誰とでもなく一人で眺めることになさったことこそ、帝が我らを愛していない証でしょう。