「もしも歴史が変わったらなんて…。
夢があるけど、実際には出来ないよ?
私達が過去に行くことが出来ない限り歴史は歴史のまま、何も変わらないよ。」


普段の私なら夢見がちな紫衣の話を否定したりしたい。


だけど、今目の前で彦根城を見下ろし指差しながら微笑む紫衣に何か恐ろしさを感じて私は紫衣の言葉を否定した。



「そうね、歴史は変わらなかった。
だけど…
今から変わっていくよ?
少しずつ…。」



俯き視線を地面に落としたまま紫衣は小さな声で呟いた。



その紫衣の呟きは突然吹いた風に消され私の耳には届かなかった。



「芽衣ちゃん、お腹すいちゃった。
持ってきたお弁当食べようよ。」



風に煽られ乱れた髪を整えた私に紫衣はニッコリと笑って話しかけてくる。


さっきまでと違ういつもの紫衣。



「うん。食べよう食べよう。
私は今日はサンドイッチ作ったよ。
紫衣、卵サンド好きだよね?」


「紫衣はおにぎり作ってきたよ。」