「三成様?」


瞼を持ち上げた紫衣の表情は驚き、大きく目を見開いていた。


「起こしてしまったな。」


優しく微笑む三成の笑顔。


唇には柔らかい彼の唇の感触が残されていた。


それにしても、いつの間にか眠っちゃったんだ私。


「いつからそこにいたのですか?」


「まだそれほど時間はたっていない。
そなたの寝顔を見ていると口付けたくなった。」

「やっぱりキスしたの?」


「それで起きたのではないのか?」


「そうです。
けど、夢なのかなって思いもあったから…。」


「夢で誰と口付けをしたのだ?」


夢の中でも俺が独占したいと想うのは愚かだろうか。


「そんなの決まってます!」


キスをするなんて三成しかいないじゃないって言葉は飲み込んだ。


だって恥ずかしすぎる。

くすくすと笑う三成の声がして、私は俯いたまま顔を上げれなかった。


きっと真っ赤になっているに違いない。


「具合はどうだ?」


「随分楽になりました。」


病は気からって良く言ったものだ。


「胸のムカムカも今は嬉しいの。」


「大事にして欲しい。」

体を起こそうとすると、心配そうに見つめて言葉を掛けられた。


二人だけの部屋。


優しい三成にホッと胸を撫で下ろす。


「桔梗さんが部屋に来ました。」


「そうか…。」


「ありがとう。」


「俺は別に…」


目を泳がせる三成。


優しいのにとっても不器用な人。


くすくすと笑う私に三成はふいっと顔を逸らす。

「耳が赤いよ?」


笑いながら話しかける私に、


「その生意気な口を塞いでやる。」


口調は荒いのに触れるだけの優しいキスを落とした。