二人は紫衣の寝顔を見つめた後、音を立てずに部屋から出て行った。
部屋の襖の前に二人で座って部屋で眠る紫衣を守るのが二人の役目。
だけどそれはすぐに終わりを迎えた。
「もう、下がってもよい。」
三成が部屋に戻ってきた。
「御意。」
紅葉と桔梗はすぐに音もなく姿を消した。
部屋に入り紫衣の眠る布団の側に座ると三成は彼女の寝顔を愛おしそうに見つめて、その頬にそっと触れた。
「まるで幼子のようだな。」
表情を緩めてポツリと呟く三成。
無邪気な娘。
だが、その心の透明さに紫衣の周りはいつも賑やかで自然に人に囲まれている。
人を癒やすその笑顔を惜しみなく振りまく姿はまるで春の桜のようで、
「花嵐か…」
お前に触れたいと思いを抱く者の風にお前は吹かれ、美しく花びらを散らしていく。
「だか、俺の側にいろ。」
願わずにいられない。
失いたくないんだ。
ずっとお前の瞳に映っていたい。
「誰にも渡さない。」
手放す事など出来ないんだ。
紫衣の瞼にそっと口付けを落とした。
「ふ…んん。」
艶やかな唇は体調が悪いからだろうか、少し渇いている。
指でなぞってからその唇に俺の唇を重ねた。
漏れる吐息が心を震わせた。


