部屋に着いてからはおとなしく布団に入った。
気分が悪かったのは悪阻だとわかり、不安もなくなったからか屋敷に着いて診察を受けてからは少し楽になっている。
「紅葉さん、ごめんね。」
布団の中から紅葉さんに話し掛ける私に紅葉さんは黙って首を横に振った。
そして、そのまま部屋を出て行こうとして立ち上がった。
「出てっちゃうの?」
紅葉さんの着物の裾を掴んで引き止めながら尋ねると紅葉さんは、
「部屋に二人だけでいるのはいけないことだからな。
襖の向こうから話し相手になる。」
余所余所しい口調で応えてくれた。
「そう…なんだ…」
本当は納得なんて出来てない。
だけど、また紅葉さんに迷惑を掛けることになるのは嫌だ。
だから私は紅葉さんの着物の裾から手を放し、彼の背中を見送った。
襖を開けるため手を伸ばす紅葉さん。
「紅葉だけでは役不足ではありませんか?」
襖は紅葉さんが開けるより先に自動扉のように開いてニッコリ笑顔の桔梗さんが言葉を落とした。
突然の桔梗さんの登場に驚き、唖然としたまま対応できない私をそのままに紅葉さんと桔梗さんはごにょごにょと内緒話を始めた。


