私は長吉さんから離れて左近さんに抱きついた。
そして左近さんの耳元で小さく囁いたんだ。
「私をここから連れ出して...。」
そうすることが長吉さんと真衣さんの幸せ。
ここに残ってはいけない。
私のせいで誰かが不幸になるなんて絶対にダメ!!
震える声で左近さんに伝えた。
左近さんは私の気持ちを察してくれて大きく頷くと長吉さんに話しかけた。
「私の妻は病気がちで子が出来ません。良かったら紫衣を私の養女として迎えたい。
竹やぶで紫衣を見つけたとき長吉さん、あなたが水害の後紫衣に希望を抱いたように私もこの子に希望を見つけたんです。どうか、紫衣を私に...。」
頭を下げながら離す左近さんの最後の言葉を打ち消すように真衣さんが口を開いた。
「いいお話じゃないか。紫衣にっとっても私たちにとってもね。お受けします。
どうぞ連れて行ってくださいな。」
満面の笑みで応える真衣さん。
長吉さんはとても複雑な表情をしていたけど覚悟を決めたように口を開いた。
「紫衣のためにはそのほうがいいのかもしれない。ここにいても俺は紫衣に何もしてやれない。左近さん紫衣を大切にしてやってください。お願いします。」
そう言って深々と左近さんに頭を下げた。


