私が一方的に悪いってわかっているのに彼の背を追いかけることが出来なかった。
それは意地を張るとかじゃなく、言ってしまった事に取り返しはつかなくて、彼を傷つけてしまったことがわかっていたから、怖かったんだ。
「好きなのに…。」
一人になった部屋でポツリと呟く言葉。
大切だから、好きだから無理をして欲しくない。
「あなたが私を想ってくれる、それと同じ様に私もあなたに無理なんてして欲しくないの。
あなたが大切だから二人で背負っていきたいの。守られるだけじゃダメなの。」
ごめんなさいって泣き崩れる私を背中からそっと抱きしめてくれる人。
「すまなかった。」
部屋から出て行ったはずの三成だった。
涙は止まることを忘れたかのように溢れ続け体をくるりと反転させられ、抱きしめられた三成の胸にシミを作っていく。
「着物が…」
汚れますって彼の胸を掌で押して離れようとしても、
「よい。」
彼は私を抱く力を一層強くする。
そして私の頭を撫でながら彼は言葉を紡いだ。
「想いが強すぎてぶつかるのだな。」
優しく響く彼の声。
「同じ様に想う心がお互い譲れないのだ。
初めてだな。」
ポツリと呟かれた初めてという言葉に私は彼の顔を見上げた。
「夫婦喧嘩というものを初めて経験した。」
くすりと笑う三成に私も笑顔を返した。
まだ涙は止まらなくて、顔はきっとぐちゃぐちゃだと思うけど、彼に笑顔を見せたかった。
「あなたは妻に優しすぎる困った夫です。」
「そなたは夫を想いすぎる困った妻だ。」
「だけど、私達はとてもいい夫婦ですよね?
こんなに優しい喧嘩が出来るんですもの。」
満面の笑みを浮かべて三成に言うと、
「さっきは夫婦ではないと言わなかったか?」
彼は意地悪な笑みを浮かべて言葉を返す。
「もう忘れて下さい。」


