「紫衣をからかうのは、それくらいにして少しお話を聞いて欲しい。」
部屋の雰囲気を変えたのは左近さんで、左近さんの言葉に全員が表情をキリリと真面目なものに変えた。
「今日、殿下がなぜここにいらっしゃったのか殿から聞いたと思う。」
「はい。」
「殿下は殿に大切な人が出来たことを大層喜んでおられた。」
「はい。」
「それと同時に殿下の悪い癖…。
紫衣にとても興味を抱いておられる。」
「はい?」
「最悪、紫衣を側室にと…」
「ちょっ…ちょっと待って下さい!
側室ってどういうことですか?」
「うた様と同じように…」
「嫌ですッッ!」
「殿下は天下統一に一番近いお人、逆らうということは国に背くと言うことだ。」
「それでも嫌です。
私が一緒にいたいのは三成様だけです。」
「そうは言っても殿下の元へ行けば、贅沢な暮らしが保証されるのだぞ?」
「入りません。
たとえ、三成様が田畑を耕す農民であっても私は三成様と一緒に生きたい。
だけど、私が邪魔になるのなら…」
私が断れば三成だってつらい立場に立たされるって事くらい私にもわかるよ。
だからずっと側にいたいけど、三成の邪魔はしたくない。
床を見つめて涙を流した。
ポタポタと零れ落ちる大粒の涙。
床にたくさんのシミを作った。
「もうよい!」
ドサリと床に何かが倒れる物音と大きな三成の声、そして私を引き寄せる腕が体に巻き付いた。
涙を拭って顔を上げると、床に転がる紅葉さんと桔梗さん。
そして私を抱きしめるのは息を乱した三成だった。


