突然の桔梗さんの登場といけないという言葉に私は肩をびくりと震わせた。


「桔梗に聞いてないだろ!」


不機嫌さを表面に押し出した紅葉さんの声が響き、朱里さんと左近さんは二人の様子をくすくすと笑いながら見ている。


「我ら忍と一緒に朝餉など…」


「じゃ、忍でなかったらいいのかよ。」


桔梗さんの言葉を遮るように紅葉さんの言葉が落とされた。


「そうではなくて…」


しどろもどろな桔梗さんに紅葉さんは、


「あー、面倒な奴だな。決めるのはお前か?
殿を差し置いてお前が決めるのか?」


とっても意地悪な言葉を投げつけた。


焦ったように、


「滅相もございません。」


平伏しながら叫ぶ桔梗さんが凄く気の毒に思えた。


なんだか桔梗さんが可哀想に思えて、勝ち誇ったように鼻を鳴らす紅葉さんが憎らしく思えた。


だから、


「なんか紅葉さん、嫌な感じだね。」


ポツリと漏らしてしまった言葉にギロリと紅葉さんに睨まれてしまった私は慌てて床に視線を落とすしかなかった。


紅葉さん達は私の為にしてくれているのに…。


「ごめんなさい。」


なんだか情けなくて謝りながら涙を堪えるのが精一杯な私。


「殿?」


見かねた左近さんの呼びかけに三成は静かに口を開いた。


「桔梗、良いのだ。
紫衣の事は聞いているな?」


「はい。」


「これは紫衣の生きた時代の常識、俺達に全てを合わせ生きる事を俺は望んではいない。」


「はい。」


「わかれば、もうこの話は終わりだ。」


「はい。」