秀吉が忍んでこの屋敷に来たのは、清正から私の存在を聞いたからだと教えられた。


「秀吉様はうたが俺の妻として存在しているのを知っていた。」


「はい。」


ずっと紅葉さんがカムフラージュしてきたんだ。

「宴の時の様子を聞いて、紅葉ではないと悟ったのだろう。」


「どういうことですか?」


「そういうことだ。」


歯切れの悪い三成の言葉に首を傾げていると、


「初々しかったのですよ。」


朝食の膳を手にした朱里さんが部屋に入ってきて言葉を落とした。


初々しかった?


それでも尚、意味を理解できないでいる私に、


「振る舞いや態度がなってなかったって事だよ。俺と紫衣は違うだろ?」

朱里さんに続いて部屋に入ってきた紅葉さんに言われた。


それって…。


「私がダメすぎてバレちゃったの?」


あの日、毅然と振る舞いたかったけど出来なかった。


紅葉さんの言葉に涙ぐむ私に、


「紫衣の様子というよりは殿の様子がいつもと違ったのが原因ですよね?殿?」


左近さんがニヤリと笑って言葉を落とした。


「うるさいぞ、左近。」

コホンと咳払いをしながら左近さんに声を掛ける三成。


ほんの少し頬が赤いのは気のせい?


「今日は久し振りにみんなで朝餉を頂いてもよろしいですか?」


配膳を終えた朱里さんの言葉に私は笑顔になった。


城にいるとき、何度か五人で食事をした。


話しながら食べることはお行儀が悪いことだけど、私の時代の食事を再現するように集まって食べる事があった。


「殿、よろしいですかな?」


ちょっぴり渋い表情の三成に左近さんが問いかける。


私も心配になって三成を見つめた。


けれど、三成が返事をする前に部屋に飛び込んできた桔梗さんの声が部屋に響いた。


「いけません!」