驚き声をあげる私の口を掌で覆う三成。
「呼び捨てにしてはいけない。」
冷静に言葉を落とされた。
「ごめんなさい。」
桔梗さんにも怒られちゃったのに、様って本人を目の前にしないと付けるのを忘れてしまう。
歴史の本には様は付いていないし、人物名をいつも呼び捨てにしていた私の悪い癖を直さなきゃいけないって真剣に思った。
シュンと肩を落とす私に掛けられた声は真剣で、
「紫衣の時代で許されることも、今は許されない。
下手をすれば命に関わることになるから気をつけろ。」
でも、私を思って言ってくれてるのがわかるから、
「はい、気をつけます。」
私も真剣に応えた。
それにしても、忍んでまでいったい何をしに来たのかな?
それに三成が迎えに来るなんて聞かされていなかったよ?
「あの…どうして三成様はここにいるのですか?それに秀吉様も何故ここにいらしたのですか?」
矢継ぎ早に投げかける私の質問に三成は苦笑して、
「俺が迎えに来たことが嬉しくはないのか?」
なんだか的外れな質問を返された。
「嬉しかったです!
とっても嬉しかった。
あなたの姿を見たとき夢かと思ったの。
あなたの声を聞いたとき嬉しくて涙が溢れたわ。」
三成の意地悪な質問に私は必死で気持ちを伝えようと言葉を紡いだ。
そんな私を三成は優しく微笑んで、頬にそっと唇を寄せた。
「紫衣を誰にも渡さないために俺はここに来た。お前は俺だけのものだと示すために来たのだ。」
そして私を熱い視線で捉えたまま言葉を紡いだ三成。
私の問いかけの欲しい答えではなかったけど、その言葉は私の心に響き、
「私はあなた以外愛することは出来ないわ。」
私も彼の気持ちに精一杯応えるつもりで言葉を紡いだ。