少しタイミングを逃してしまったのかと急に緊張が高まって今度はいくら挨拶をしなきゃって思っても口が開かなくなって、
「紫衣?」
三成に声をかけられてハッとした。
「島左近の娘、紫衣でございます。」
深く頭を下げて言葉を紡ぐ。
その男性はニコニコと笑顔のまま三成に耳打ちをした。
途端に真っ赤に染まる三成の頬。
いったい何を言われたの?
彼の変化を不思議に思い首を傾げながら見つめていると、
「紫衣、おいで。」
三成はすぐに表情を元に戻して、私を呼んだ。
着物の裾を気にしながらしずしずと三成の側まで移動して彼のすぐ横に腰を下ろした。
「そなたがこの堅物三成の心を射止めたおなごなのじゃな。」
座ってすぐに男性から声をかけられて、三成が頬を染めていた理由を理解するとともに私も恥ずかしさに顔をあげれないまま床を見つめるしかなかった。
っていうか、いったいこの男性は何者なの?
どうして私は紹介されているのだろう…。
「若い二人をからかうとは殿下もお人が悪い。」
私達を庇うように話したのは左近さんで、
「初々しくて、つい…な。」
その男性はニコニコと笑顔のまま左近さんに言葉を返した。
そんなやり取りをして、しばらくするとその男性は帰ると言って部屋を出て行った。
私は見送りは三成だけでいいとの男性の言葉に従い、左近さん達と一緒に部屋に残った。
身分の高い人なのだろうか、三成がとても丁寧にその男性を誘導する姿に疑問を持った。
左近さんも殿下と呼んでいた。
それに三成をとても慕い大切に思う紅葉さんが彼がからかわれたときに大人しくしていたのも不自然だ。


