旅の支度は整ってる。
というか荷物はないし、準備と言われても何もすることはないよ?
「朱里さん?」
部屋に入っても私と朱里さんは向かい合って座っているだけで、
「もうすぐですよ。」
朱里さんから返ってくる言葉の意味もわからない。
本当に訳がわからなくてキョトンとしていると、
「失礼します。」
襖越しに声がして、桔梗さんが部屋に入ってきた。
「おはようございます。姫様。」
部屋に入るなり床に手をついて丁寧に挨拶をしてくれる桔梗さん。
「おはようございます。」
私も同じ様に手をついて挨拶を返した。
「姫様、また間違っていますよ。」
「?」
「私達のような者に同じ様に丁寧な挨拶はいりません。」
「?」
「そんなに頭を深く下げず、軽く挨拶を返せばいいのです。」
「あの…ごめんなさい…」
「それもいけません。
なぜ謝るのです?
姫様は殿の奥方様、もっと威厳を持って堂々と振る舞って頂かなければ…。」
「桔梗、うるさい!」
くどくどと落とされる桔梗さんの言葉。
桔梗さんに少し遅れて部屋に入ってきた紅葉さんが遮るように言葉をかけてくれた時には既に私は涙目になっていて、そんな私に紅葉さんの言葉は助け船以外のなにものでもなく、とてもありがたかった。
「桔梗も相変わらずだね。」
一瞬出来た静寂を破るのは楽しそうな朱里さんの声で、
「堅苦しくて桔梗がいると息がつまるんだよ。」
紅葉さんは溜め息混じりに朱里さんに話し掛けた。
「何を申しますか!
紅葉こそ、もっと姫様の側近としてのお役目をシッカリ果たして頂きたいものです。」
紅葉さんの言葉に応戦する桔梗さん。
二人の間に火花が見えるのは気のせいかな?


