「おやすみなさい姫様。」
深い眠りについた私には聞こえるはずのない桔梗さんの声。
眠るまで部屋の前にいてくれたんだ。
「眠ったのか?」
「どうして部屋から出るのを止めなかった。」
「うろちょろしてると紫衣が気にするだろ?
俺達が眠らずに自分の警護をするなんて紫衣は受け入れられないんだよ。」
「姫様らしい…」
くすくすと笑う桔梗さん。
「左近様に悟られているとはな…」
「あぁ、お前の姫様への気持ちは左近様も朱里様も気付いておられる。」
「参ったな…。」
「そう嘆くな。
左近様も朱里様もお前を咎めているわけではない。」
「で?お前はどうなんだ?」
「は?」
「紫衣を放っておけるか?」
「それは…。」
「お前も俺と同じだろ?」
「………。」
「伝えられなくても離れることは出来ないんだ。紫衣と殿の幸せが俺の願い。」
「わかるな…
その気持ち…。」
「お前もきつい道を選ぶんだな。」
「姫様の笑顔を守りたい。
ただそれだけだ。」
「損な役目なのか得な役目なのかわかんねぇな。」
「得な役目だろ。
忍の友達になろうなんて貴重な人と出逢えたんだからな。」
「そうかもな…。」
くすくすと笑いながら視線を合わせる二人。
雲がかかっていた月が顔を出して二人を優しく照らしていた。


