食事とお風呂を済ませた私は紅葉さんのお部屋を訪ねた。
眠れないんだ。
紅葉さんのお部屋は私が通された奥の部屋からは少し離れていて、暗い廊下を月の灯りだけを頼りに足を進めた。
紅葉さんのお部屋の前に辿り着き、襖越しに声を掛けてみると、
「紫衣姫、いかがなされましたか?」
部屋から出てきたのは桔梗さんだった。
「眠れなくて…。」
呼び名は変えてくれないけど、食事の時にお話をして少し打ち解けた桔梗さん。
「少しお話がしたかったの。」
「では廊下で庭を見ながらお話しましょうか。」
部屋にはいれてくれなくて、桔梗さんは廊下に腰掛けた。
「寒くないですか?」
「うん。あの…紅葉さんは?」
「紅葉は湯殿に…。」
「そっか、お風呂に入ってるんだね。
桔梗さんは入らないの?」
「私は紅葉と交代で行きます。」
「どうして一緒に入らないの?」
「はて?おかしなことを言う姫様だ。
私と紅葉は貴方様をお守りするために遣わされているのですよ?
その2人が同時に貴方様のおそばから離れることは致しません。」
「そうなの?」
「そうです。
姫様は紅葉ととても仲がおよろしいようにお見受けいたしますが、紅葉の存在をどのように受け止めておられるのか教えて頂けませんか?」
「仲良しのお友達じゃいけないの?」
「いけません!
我らは忍。
友達などとは滅相もございません。」
「そう…。
だけどね、私はここに来てたくさんの人に助けられながら今日までやってこれたの。
だから力をくれる人はみんな大切だし、私の宝物なんだよ?
仕えるとか従うとかそんな関係は嫌なの。
忍ってお友達を作っちゃいけないきまりがあるの?」
「そうではなくて…。」
「あるの?ないの?」
「ありません。」
「だったら特に問題はないでしょ?」


