屋敷の奥に用意された部屋に通された。
とても綺麗に整えられている部屋。
外観は大きくも、さほど綺麗な造りに見えなかった屋敷の中とのギャップに少し驚いた。
「紅葉さん、ここは誰のお屋敷なの?」
お茶菓子のお饅頭を頬張りながら尋ねる私に紅葉さんもお茶を飲む手を止めて教えてくれた。
「ここは殿がお世話している者の屋敷、殿も城と大阪を行き来する際に寄られる場所だ。」
だから安心していいんだぞって続く言葉に私は頷く事で応えた。
「それにしても、さっきの桔梗の顔見たか?」
まだ聞きたかったけど、紅葉さんは話題を変えてしまったから、屋敷の事について何も聞けないまま私は紅葉さんの話に合わせた。
「桔梗さん、なんだかすごく気の毒に思えて仕方ないよ。」
「言っただろ?
いい薬だって。」
「だけど、私が奥方様なんて言われてもなんだかまだピンとこないのに…。」
「ならずっと小うるさい桔梗の小言を聞く方がいいのか?」
「それは嫌!…かな?」
「桔梗はあれくらいでは変わらねぇよ。
もうすぐケロッとしてまた小言の鬼になるさ。」
「そ…そうなんだ…。」
話したい事はたくさんあるけど、お茶を優雅に飲む紅葉さんからは話はしないってオーラが出ていて私も大人しくお茶を啜った。
「奥方様――…。」
その静寂を破るのは部屋に飛び込んできた桔梗さんで、
「うるさいぞ!」
紅葉さんは不愉快そうに眉を寄せて声を荒げた。
「申し訳ありませんでした。」
ガバリと音が鳴りそうなくらい勢いよく床にひれ伏す桔梗さん。
「やめて下さい!桔梗さん!」
私は桔梗さんの腕を掴んで声を掛けた。


