「はぁ――…。
よりにもよって桔梗かよ――…。
はぁ―…、ついてないよな俺――…。」
「何とでも仰ってもらって結構!」
相当ショックなのか何度もため息を吐く紅葉さんにピシャリと言い放つ桔梗さん。
そして、桔梗さんは私に視線を向けた。
2人の様子を私はただポカンと口を開けて見つめるという間抜面をバッチリ桔梗さんに見られてしまった。
「姫様、そのような間抜け面を晒してはいけませんね。
大阪では殿の奥方様としてシッカリとした振る舞いをして頂かなくては、殿が恥ずかしい思いを致しますゆえ…。」
厳しい桔梗さんの言葉に私は言葉が出なかった。
「紅葉や朱里様は姫様の可愛らしさに甘く接してきたようですが、私が厳しく指導致します。
よろしいですね?」
「あの…」
指導って振る舞いの事かな?
確かに私は何も出来ない。
だけど可愛らしいからって言葉はちょっと違う気がする。
私がダメ過ぎて紅葉さん達の手に負えなかったんだと思うって言いたかったのに、
「返事はあのではありませんよ!」
私の言葉を聞かずにピシャリと言い放った。
怖い…。
じわじわと涙が込み上げてて、俯く私の手をぐっと引っ張ったのは紅葉さんで、
「気にするな。
桔梗は融通のきかない堅苦しい奴だからな。
確かに作法は身につけなくてはいけない。
けどな、桔梗の思う通りのお前になれたとしても、喜ぶのは桔梗だけで、殿も今のままの紫衣を望んでる。」
ギュッと紅葉さんに抱きしめられた。
「桔梗、お前はとにかくつまんねぇんだよ。
紫衣には紫衣の良さがある。
俺も朱里も左近様も、もちろん殿も紫衣を変えたいわけじゃないんだよ!仕事熱心なのもいいけど、そこんとこ頭に入れておくんだな。」
なんだか紅葉さんがとても頼もしく見えた。
そして言い返そうとする桔梗さんを無視して私を支えながら歩き出した。
片方は馬を引っ張り、もう片方で私を支えて歩く紅葉さん。
紅葉さんの言葉も嬉しかったけど、紅葉さんのぬくもりを感じて私はとても安心できた。


