「紅葉、姫様が怖がってるよ?」
「お前が言うな!」
「顔が真っ赤だ。
ほーんと紅葉みたい。」
「うるさい!桔梗!」
結局喧嘩を始めた2人の間で私はオロオロとするしかなく、
「紫衣!
飛ばすぞ!」
「きゃっ!」
シッカリ馬につかまれって言うが早いか馬が急に走り出すのが早いかという具合で急発進する馬に私は悲鳴をあげるしかなかった。
怖いなんて感じる暇がないくらい早く走る馬にしがみつくことしか出来ない。
勿論瞼は固くギュッと閉じたままで、
「紫衣、目を開けて見てみろよ。」
私に被さるように体を寄せる紅葉さんの声が耳元で響いた。
その声に導かれるように瞼を持ち上げると、緑が瞳に映った。
目の前が全て緑で覆われている。
たくさんの木の緑。
重なり合う葉と葉の間から木漏れ日がキラキラと光っている。
「綺麗…。」
私が景色に見惚れる頃には馬はゆっくりとした歩みに変わり、そして止まった。
「まるで緑のカーテンだね。」
思わず零れた言葉に、
「かーてん?」
紅葉さんは怪訝な表情を浮かべた。
カーテンなんてこの時代に存在しない物。
「薄絹を緑に染めた物に囲まれてるみたいね。
風に揺れると太陽の光がそこから漏れるでしょ?」
必死に取り繕ってイメージを説明する私に、
「紫衣の時代の物なのか?」
紅葉さんに尋ねられた。
「そうだよ。
襖や障子ではなくて、布を垂らすの。」
拙い説明しか出来ない私に、
「ふーん。」
絶対に伝わってないってわかるような言葉が紅葉さんから返ってきた。


