出立の準備を始めた翌日、大きな立派な馬が城に届いた。
馬に乗ってきた人は三成の使者だと名乗った。
「この馬で急ぎ出立して頂きたい。」
突然現れて告げられた言葉に私は困惑し、紅葉さんは両手を挙げて喜んでいた。
「すぐに行こうよ!」
「無理だよ…。」
自転車の二人乗りとは訳が違うよね?
馬だよ…。
怖いんだもん。
「なんでだよ!
こんな立派な馬まで用意してくれてるのに…
何を迷ってるんだよ!」
「………。」
イライラした紅葉さんの口調に責められている気分になった。
だって馬だよ…。
乗馬なんてしたことないし…
怖いんだもん。
子供の頃、動物園で乗せてもらった事があるポニー。
カポカポとゆっくりと歩く背中はとても揺れたんだ。
「なんとか言えよ!」
「準備だってまだ出来てないし…。」
「文には何も持ってこなくてもいいって書いてあるだろ!」
「でも…。」
「なんなんだよ!
紫衣は殿に逢いたくないのか?」
「そんなことないッッ!」
逢いたくないわけがないよ…。
少しでも早く逢いたい。
だけど馬だよ!
馬に乗れっこない…。
「明日の朝出立するからな!」
ウジウジと悩む私に紅葉さんは有無を言わせないって口調で言葉を落とした。
「ぅ…うん。」
馬に乗るのが怖い。
その気持ちは変わらないけど私は頷きながら返事をしたんだ。」


