忙しいとは聞かされていても定期的に書状を届けてくれる三成。


彼からの書状に甘い言葉なんてない。


いつも自分の近況報告をしているだけの文面だった。


私の時代なら寂しくてどうしようもないときは電話で声が聞ける。


メールを使えば文章のやり取りもとても簡単に行える。


だけどここにはそんなもの存在しない。


書簡だけが唯一の繋がりになるんだ。


「寂しいな…。」


ポツリと呟きながら三成からの書状に目を通した。


「お忙しい殿がお前のために文をしたためてくれているだけ感謝したらどうなんだ?」


わかってますぅ!

そんなこと百も承知ですぅ!

だけど三成からの書簡は嬉しい反面寂しさも込み上げるんだ。


私は心の中でだけたっぷりと紅葉さんに悪態をついて文に目を通し続けた。


やっぱり上杉の上洛の為の準備で目が回るくらい忙しいと書いてある。


確かに大変だという事は想像がつく。


数人の人間を迎えるわけではなく史料には上杉は四千の兵と共に上洛と書いてあった。


四千人を収容する場所なんてなんだか大きなコンサートホールを想像してしまう。


それに、ただ収容するだではない。


四千人もの人間の衣食住、全ての事について準備が必要なんだ。


「旅行会社みたいだね。」


「はぁ?」


「独り言です。」


「文にはなんと書いてあった?
俺のことは?」


「皆、息災か?だって…」


全部読み終えてないけど期待している紅葉さんに少し意地悪を言ってやった。


「それだけ?」


「うん、それだけ。」


あからさまにガックリと肩を落とす紅葉さん。


可哀想だけどいつもゆっくり目を通したいのに横から何が書いてあるのかと聞いてくる紅葉さんに気が散らされていたから防衛の為に素っ気なく応えるのが癖になっていた。