清正らを宴に呼んでから数日がたった。


三成は忙しく、水口にはほとんど不在で私はまた待つだけの日々が始まった。


越後から上杉景勝が上洛し、秀吉に謁見するのを三成が周旋することになっている。


その準備にずっと忙しく過ごしていたが、上洛の日が近づいていた。


待つことしか出来ないのがなんだか物足りなくなってきた。


そんな風に感じだした頃私宛ての書状が届いた。

「紫衣、これお前宛てに届いた。」


書状を手に部屋にズカズカと足音を響かせながら入ってきた紅葉さん。


彼は三成に留守を任されてすこぶる機嫌が悪かった。


「まだ機嫌悪いんだね。」


「そんなことない!」


「ほら、その言い方!
機嫌悪いじゃない。」


毎日顔を合わすのに紅葉さんの機嫌は一向に良くならない。


そんなに三成の側にいたいの?


聞いてみたいけど、そんなこと聞いたら自分の首を絞める事になるってわかってるから聞けない。

だって意地悪紅葉さんだもん。


お前は平気なのかよって絶対に聞かれる。


そしたら答えられっこない…。


私も三成が恋しくて仕方ないんだもん。



「殿からの書状だ。」


どすんと音を立てて私の前に腰を下ろす紅葉さん。

忍なのに全然忍んでないのが少し可笑しかった。

だけど笑ったりなんかできない私は書状を受け取って、その手で広げた。