悲劇を繰り返さないために私は導かれたんだ。


お兄ちゃんを支え助けることの出来る紫衣と入れ替わる事が必要だったんだ。


それは私だけの想いじゃない。


遠く400年の時の隔たりを越えて紫衣の心にもあったはず。


転生した私がお兄ちゃんの幸せを祈るのも願うのも不思議な事ではないはずだから…。


「それにお兄ちゃんだって願ったはずだよ。
私を悲劇の渦の中に入れるは嫌だって…。
私がお兄ちゃんと寄り添い生きるなら最後は…。」



佐和山で命を落としているはずだ。


「頭のいいお嬢さんだ。」


私の言葉を肯定するように掛けられた左近さんの言葉。


視線を向けると柔く微笑んでいる。


「殿は悔やんでおられました。
貴女様をご自分の手で殺めてしまったと…
ずっとずっと悔やんでおられたのです。」


左近さんの隣で涙を流しながら話をしてくれる朱理さん。


彼女も関ヶ原の敗戦で命を落としたの?


「朱理はあなたの側にずっと仕えていた忍ですよ。」


私の心を読みとるように左近さんは話してくれる。


ここにいる全員が同じ悲劇を繰り返したくないと願っている。


ここにいる全員がお互いを大切に想いあっている。


「お兄ちゃん、だったらやっぱり良君の存在が私は怖い。」


彼が私達の想いとは違う道を作ってしまうかもしれない。


「だが、止められない。」


苦痛に歪むお兄ちゃんの顔。


お兄ちゃんの声に全員が意気消沈した。